ニュースの概要
葬祭大手のベルコが、運営する「ユアホール」のうち26会館について、「家族葬専用式場はないろ」への名称変更を順次進める。山陽新聞が伝えた。従来の屋号をやめ、利用目的をそのまま名前に入れた呼称へ切り替える形である。報道で伝わる範囲では、建物の建て替えではなく名称の切り替えだ。看板と呼び名で「少人数で見送るための式場です」と伝える点が、今回の中身といえる。大きな祭壇と多くの会葬者を前提にした式場像から、家族中心の小さな葬儀を主役に据えた式場像へ、売り場の軸足を移す動きである。屋号だけでは用途が伝わりにくい。名前の変更は小さな出来事に見えるが、葬儀の選ばれ方が変わった結果でもある。
引用元: ベルコ、「ユアホール」26会館を「家族葬専用式場はないろ」へ順次名称変更(山陽新聞)
分析・見解
家族葬が主流になり、式場の名前が仕事を始めた
葬儀の形は、この十年ほどで大きく変わった。各種の民間調査では、家族葬を選んだ人が全体の半数を超える結果が目立つ。参列者が数十人以下の小さな葬儀は、もう特別な選択ではない。新型コロナの流行で、会葬者を絞る習慣が一気に広がったことも背中を押した。
ところが式場の側は、百人規模の通夜・告別式を想定した広いホールを持つところが多い。少人数で使うと、がらんとして寂しい。遺族が見学して「うちには広すぎる」と感じ、そこで候補から外す場面は珍しくない。名前に「専用」と入れる狙いは、この見学前のためらいを消すことにある。
「専用」と名乗ることで得るものと手放すもの
利点は分かりやすい。検索や看板で一目で用途が伝わり、問い合わせの入口が広がる。広告費をかけなくても、家族葬を探す人の目に留まりやすくなる。
一方で、手放すものもある。「家族葬専用」と名乗れば、社葬や地域の大きな葬儀を求める人には候補から外れやすい。地方では、故人の仕事や町内会の付き合いで、百人を超える参列者が来る葬儀も残っている。名前で選別すれば、その需要を取りこぼす恐れがある。
だから大切なのは、名前と中身の一致である。名前だけ変えて、広いホールに数人が座る形のままなら、遺族の期待は裏切られる。小さな部屋の設え、控室の位置、食事の出し方まで、少人数に合わせて作り込めるかが問われる。
互助会系の大手が、地域の小さな式場と戦う場面
互助会系の強みは、会員制度で事前に顧客とつながっていることだ。毎月の掛金を積み立てる仕組みのため、いざというときに声がかかりやすい。ただし積立金が「大きな式」を前提に設計されていると、家族葬では積立金が余る、あるいは追加費用が読めないという不満が出やすい。専用式場への改称は、この料金の見えにくさへの答えとしても読める。
一方、地域には家族経営の小さな葬儀社や、寺院・自治体系の式場もある。価格を明示し、顔なじみが担当する強みは、大手にも簡単には真似できない。同じ「家族葬」を掲げても、勝負どころは名前ではなく、担当者の対応と料金説明の丁寧さに移っていく。
件数は増えて単価は下がる時代に、看板をそろえる効果
亡くなる人の数は、人口が減る地域でも2040年ごろまで増え続ける見通しである(国の推計)。件数は当面伸びるが、一件あたりの規模と単価は小さくなる。この「件数増・単価減」の時代には、運営の効率が利益を分ける。
26会館をひとつの看板にまとめると、広告、予約窓口、スタッフ研修、備品の調達を共通化しやすい。利用者にとっては、どの会館でも同じ水準で小さな葬儀ができるという安心感につながる。名前の統一は見た目の話にとどまらず、運営の標準化の合図でもある。ここが今回の動きの、いちばん見落とされやすい点だと考える。
ビジネスへの影響
広告と問い合わせ対応を、新しい名前に合わせて見直す
葬祭事業者がまず確認したいのは、自社の式場が「家族葬に向く」と第三者に伝わっているかである。ウェブの紹介文、地図サービスの登録名、チラシの表記が古い屋号のままだと、検索で見つけた人が混乱する。名称を変えるなら、地図の登録、電話の応対、パンフレットを同じ日に切り替えたい。旧名を一定期間併記しておくと、過去に利用した人も迷わない。
次に、料金の説明を見直す。家族葬は参列者が少ない分、費用が低いと思われがちだ。しかし飲食や返礼品の単価、式場使用料の組み方で、最終額は変わる。見積書に「何人までの想定か」「追加になりやすい項目」を書いておくと、後日のトラブルが減る。
地域の式場は、名前より「中身の見える化」で対抗する
規模の小さい式場は、大手のような統一ブランドを作れない。代わりに、実際に使われた式の様子を、遺族の許可を得た範囲で写真や言葉で見せるとよい。部屋の広さ、控室の様子、棺との距離感は、文章よりも写真のほうが伝わる。
また、家族葬専用をうたわず、「小さな式から大きな式まで対応」と打ち出す道もある。今回の動きは、専用化が唯一の正解という意味ではない。地域の参列者の層を見て、どの層に向けるかを決めることが先である。名前を変える前に、過去一年の式の参列者数を集計してみる。それがいちばん手堅い第一歩になる。